【昔話】鳶の長者【あらすじ・ネタバレ】
むかしむかしあるところに貧しい若者が住んでいました。
若者は父と2人で小さな畑で蕎麦を育てたり、焙烙を焼いて売りながら暮らしていました。
元気だった父も、最近は年老いてきて以前のように身体を動かすことが難しくなってきていました。
ある年の秋、村は嵐にみまわれ、若者の蕎麦畑はすっかり荒れてしまいました。
このままでは冬を越せないので、若者は焙烙をたくさん焼いて、海辺の町まで売りに行くことにしました。
土をこねてろくろを回し、若者と父は何日もかけて焙烙を作りました。
若者は父にわらじを作るように頼んで、自分は一晩かかって焙烙を焼き上げました。
翌朝、若者は父が作ったわらじを受け取ったのですが、長い毛があちこちからはみ出したままの、出来損ないのわらじでした。
若者は、わらじもしっかりと作れなくなるほど身体が弱ってしまったのか…と哀しい気分になりましたが、笑顔で見送ってくれる父を見て気を取り直し、元気に家を出発しました。
若者は父のわらじを履き、重い焙烙を担いで山道を登っていきました。
ようやく目指す海辺の町が見えた時に、若者はわらずの長い毛を踏み、あっという間もなく転んでしまいました。
苦労して焼き上げた焙烙は、全て割れて散らばってしまいました。
若者は割れた焙烙を眺め、頭を抱えて座り込みました。
しばらくして若者がふと顔を上げると、たくさんの鳶が飛んでいました。
鳶は次々と降りてきて、焙烙の欠片を摘んでは一箇所に集め始めました。
やがて、いつの間にか鳶の姿は消え、目の前に焙烙の欠片が積み上げられていました。
若者がそれを取り分けてみると、中から金銀小判がたくさん出てきました。
若者はその金を元手にしっかり働き、鳶の長者と呼ばれる大金持ちになり、父と2人幸せに暮らしました。