【昔話】かたみの人形【あらすじ・ネタバレ】
むかしむかし、木須川のほとりに住む長者には、娘がいました。
妻に先立たれた長者は、残された娘を大切に育て上げ、村でも評判の美しい娘に成長しました。
いつの頃からか、長者の村に近い山には山賊が住みつき、旅人が襲われるようになりました。
そんなある日、山賊の頭が長者の娘に一目ぼれし、嫁にしなければ村を丸焼きにする、と脅しました。
娘は村を守るために嫁に行くことを決心しました。
いよいよ嫁入りという時、母のかたみの人形の目があやしく光ると、娘はそのまま気を失って倒れてしまいました。
翌朝、迎えにやって来た山賊たちは花嫁姿の娘をかごに乗せて連れ出しましたが、なんとそれは花嫁衣装をつけて娘に似せた人形でした。
そのことに気がついた山賊の頭は、人形を川へ放り投げ、長者の屋敷を丸焼きにしようとしました。
山賊たちが長者の屋敷に到着すると、そこには屋敷を守るように巨大な竜が目を光らせていました。
山賊たちは竜から炎を吐きかけられ、なんとか命からがら山に逃げ帰りました。
静かになった頃、長者と娘がそっと外を見ると、そこには母のかたみの人形がずぶぬれになって転がっていました。
その後、この村の近くで山賊のうわさを聞くこともなくなりました。