【昔話】わくくり岩【あらすじ・ネタバレ】
むかしむかし、ある峠にある一軒の家でおばあさんが機を織って暮らしていました。
ある夏の日、旅のお坊さんが「水をください」とたずねてきたので、おばあさんは家の裏から冷たい川の水を汲んで渡しました。
親切なおばあさんに感心した旅のお坊さんは、機織りの糸を入れている管を手にして、何かを唱えました。
そして旅のお坊さんは「この管からは、いつまでも糸が出続けます。ただし、決して疑わないでください」と言い残して、その場を去りました。
それからというもの、旅のお坊さんの言うとおり、いくら使っても糸が全く減りませんでした。
やがて、この不思議な管のことは庄屋の耳にも入り「その糸を使って、正月までに着物を織ってください」とお願いされました。
おばあさんは毎日機を織り続け、大晦日にはあと少しで出来上がるというところまで仕上がっていました。
一息ついたおばあさんは、ふと糸が出続ける管のことが気になり始めました。
一体どうなっているのだろう…と、管をのぞいてみましたが、どこにも仕掛けなどありませんでした。
日も暮れはじめ、おばあさんは再び機織りを始めましたが、どういうわけか管から糸が出てこなくなりました。
慌てたおばあさんは、外の雪明りをたよりに、糸をつむぐためのわくくりを使って、雪の降る中で糸をつむぎ始めました。
夜が明けて元旦の朝になると、庄屋がおばあさんの家までやってきました。
すると、大きな岩の上に座り、わくくりを握ったまま凍え死んでいるおばあさんを見つけました。
それから毎年、大晦日の夜になると、この岩からカラカラとわくくりの音が聞こえてくるようになりました。
村人たちは、この岩を「わくくり岩」と呼び、機織りが上手になるよう願う娘たちが岩の上で糸をつむいでいくようになりました。