【昔話】石楠花【あらすじ・ネタバレ】
むかしむかしあるところに、元気で可愛い娘が、木こりの両親と3人で暮らしていました。
娘は、放牧している牛の世話係だったのですが、まだまだ遊びたい年頃でもありました。
ある時、黒い子牛が産まれました。
子牛がすくすく育つのが嬉しかった娘は、遊びたい気持ちもすっかり忘れて、嫌な顔ひとつせず牛の世話や両親の手伝いをしていました。
冬を越したある日、母牛が病気で死んでしまい、これをきっかけに娘はますます子牛を大切に育てました。
それからしばらく経ち、子牛は立派な黒牛に成長しました。
娘は黒牛にまたがり、山の中を駆けまわって暮らしていました。
ある日の夜、娘は黒牛と一緒に、月夜がきれいな湖を見に行きました。
帰り際、娘の目の前にたくましい若者が立っていました。
若者は娘に向かって「私はあなたに育ててもらった黒牛です。夏の月が湖に映る間だけ、私は人間に姿になることができます。私はあなたが好きです。」と言いました。
その日から娘は毎晩、湖の見える月夜の晩に、若者の姿をした黒牛と会うようになりました。
その冬、立派に育った黒牛を両親は売ることにしたのですが、娘は反対しました。
そこで娘が寝ている間に、こっそり牛を売りに出すため連れて行きました。
娘は気づいてすぐに追いかけたのですが、峠の崖下で、口から真っ赤な血を流して死んでしまいました。
翌年の春、娘が死んでいた峠に1本の石楠花が生えてきました。