【昔話】無用の位【あらすじ・ネタバレ】
むかしむかしあるところに、伊助という正直で働き者の若者が住んでいました。
伊助は朝から晩まで村人たちの手伝いをしていましたが、ある年、都の公家さまのお屋敷に奉公に行くことになりました。
公家さまのお屋敷でも、伊助は今までと変わらず真面目に働きました。
長い年月が経ち、すっかり年をとった伊助は故郷が懐かしくなって、公家さまから休みをいただき帰省することにしました。
公家さまは、よく働いてくれたお礼にと、伊助に位を授けてくださいました。
頭に冠を乗せ、立派な衣を着た伊助は、何十年ぶりに懐かしい故郷へ戻りました。
村人たちは、立派になった伊助を褒めたたえ、心から帰省を喜びました。
しかし、昔と違い、態度まで偉そうにふるまう伊助を見た昔馴染みの村人たちは、自然と距離を置くようになりました。
立派な位を持ったためにすっかり人が変わってしまったことに気づいた伊助は、恥ずかしくなりました。
再び都へ戻った伊助は、立派な位を公家さまにお返しし、晴れ晴れとした顔をして村に戻りました。
それからの伊助は、村人たちと仲良く一緒に仕事をしながら幸せな余生を送りました。