【童話】もみの木【あらすじ・ネタバレ】
町外れにある森の中に、小さくてかわいらしいもみの木がありました。
そこは、空気がおいしくて、日当たりのよいとてもすばらしい場所でした。
時々町の子どもたちが木の実を取りくると、もみの木を見て「小さくてかわいい木」とほめてくれるのですが、もみの木は早く大きくなりたいと思っていたので、ちっとも嬉しくありませんでした。
もみの木は、毎年秋になると木こりがやってきて、大きな木を何本か切っていくのを見ていました。
大木が大きな音を立てて倒れる姿にはぞっとしていましたが、どこかすてきな場所へ移動するのだろうと思っていました。
春になるとコウノトリがやってきて、大きくなった木が船のマストに使われたという話を聞かせると、もみの木はそれをうらやましく思いました。
クリスマスが近づくと、大きくて美しいもみの木が切り倒されていきました。
すずめたちから切り倒された美しいもみの木が部屋の真ん中できれいに飾られていることを聞くと、森の中よりすばらしい場所へ行けることがうらやましくて仕方ありませんでした。
うらやましがるもみの木を見てお日様や空気は、ここでいきいきとした若さを楽しみなさいと言いましたが、もみの木には理解ができませんでした。
季節が流れ、またクリスマスが近づく頃、小さかったもみの木は美しく立派に成長していました。
木こりは立派に成長したもみの木を真っ先に切り落としました。
もみの木はここよりもすばらしいところへ行けると思っていましたが、切り倒される痛みと生まれ故郷を離れる寂しさで、思っていたような喜びはありませんでした。
もみの木が連れて行かれたのは大きな屋敷で、部屋の真ん中で立派に飾り付けられ、夜になるとろうそくが灯りました。
もみの木の周りには子どもたちが集まり、楽しいお話もたくさん聞くことができました。
明日になればもっと楽しいことが待っているのだろうと、胸を弾ませていました。
翌日、家の主人がやってくると、もみの木を屋根裏部屋へ片付けてしまいました。
もみの木は、冬の間は屋根裏部屋で過ごして春になって暖かくなったらまた外へ出られるのだろうと思っていました。
暗く寒い屋根裏部屋での生活は寂しくて仕方ありませんでした。
もみの木は、生まれ育った森のことを思い出し、森での生活が1番幸せだったことに気がつきました。
ある朝主人が屋根裏部屋へやってきて、もみの木を引っ張り出し庭へ放り出しました。
久しぶりのお日様や空気を全身で感じようと枝を伸ばすと、もみの木は自分の枝が黄色く枯れていることに気がつきました。
中庭で遊んでいた子どもがもみの木につけられた星の飾りを奪うと、主人が枯れたもみの木を小さく割って薪を作り燃やしました。
もみの木は楽しかったことを思いながら、とうとう全部燃えてしまいました。