【昔話】地獄めぐり【あらすじ・ネタバレ】
むかしむかし、日光に弘法大師が開いた寂光寺という寺がありました。
この寺には、村人から尊敬される覚源上人というお坊さんがいました。
ある日、覚源上人は眠りにつくように息を引取ってしまいました。
しかし覚源上人の体はまるで生きているかのようにいつまでも温かかったのです。
覚源上人を失くした村人たちが悲しみに暮れているうちに17日が過ぎました。
すると、突然覚源上人が目を覚ましたのです。
覚源上人は集まった村人たちに向かって「わたしはたった今、冥土の旅から戻ったところです。ぜひみなさんに旅の話を聞かせたい」と言い、自分が経験したという旅の話を始めました。
「わたしは雲に乗り、闇の中をどこまでも進んでいくと、炎に包まれた山門がありました。そこには鬼がいたので、これが地獄の入口だと思い門をくぐると、そこにはえんま大王がいました。そんま大王の前にはたくさんの人がおり、その人々をえんま大王が裁いていました」
そしてとうとう、覚源上人の番がきました。
するとえんま大王は覚源上人に向かって「ここへ呼んだのは罪人としてではなく、地獄へ落ちる恐ろしさ見て人々に話してもらいたい」と言いました。
さらにえんま大王は、罪を犯せば地獄へ落ちるということを忘れている人間が多いのだと言いました。
こうして覚源上人は、地獄めぐりをすることになりました。
熱く焼かれた鉄の縄で縛られる人や、鬼に体を切り裂かれる人など、地獄の様子を見て地獄から帰ってきた覚源上人は、人々に地獄の話を説き続けました。