【小説】グラスホッパー【あらすじ・ネタバレ】
27歳の元中学教師の鈴木は、2年前のひき逃げ事故で妻を亡くしました。
ひき逃げ犯は、裏の世界では有名な「フロイライン」の社長寺原の息子であったため、その事件はもみ消されてしまいました。
妻を死なせた犯人が罪に問われないことを知った鈴木は、寺原の息子に復讐するために教員を辞めフロイラインに入社しました。
フライラインでの仕事は、危険な薬物入りの健康食品などを売りつけるというものでしたが、鈴木は復讐のために働き続けました。
寺原の息子は道楽者で、事件を起こしては父親にもみ消してもらうということを繰り返しており、そのためフライラインには復讐心で入社する者が多くいました。
鈴木にもその疑いがかけられていました。
鈴木の教育係を任された比与子は、真意を試すために街で声をかけた若いカップルを薬で眠らせ、鈴木に拳銃で殺すように命じました。
寺原の息子が鈴木が2人を殺すところを見届けることで、疑いを晴らそうとしたのです。
しかし寺原の息子は、鈴木たちの目の前で車に轢かれて死亡してしまいました。鈴木は、寺原の息子が何者かに背中を押され、車道に飛び出す様子を目撃していました。
鈴木は、裏の世界に「押し屋」と呼ばれる殺し屋があるというを知ることになりました。
比与子は鈴木に、寺原の息子を押した犯人(押し屋)を探すように指示しました。
鈴木は言われるまま押し屋の後を追うと、そこには男の他にすみれという女性と幼い息子がいました。押し屋に家族がいたことに戸惑った鈴木でしたが、確認するために押し屋と話しをすることになりました。
男は槿と名乗り、システムエンジニアであると言いました。
このことを報告するかどうか悩んでいた鈴木は、押し屋である槿の居場所を伝えられずにいると、比与子に薬物で眠らされ監禁されてしまいます。
そこで拷問されそうになりましたが、新たな殺し屋の蝉に助けられるのです。
ターゲットを自殺に追い込むという殺し屋の鯨は、衆議院議員の梶という男に秘書殺害を依頼されていました。
鯨は秘書を自殺に追い込み依頼を完遂しましたが、小心者の梶は鯨に裏切られることを恐れ、殺し屋を斡旋する岩西に鯨殺害を依頼していました。
梶は鯨を呼び出し、そこに別の殺し屋である蝉も呼び鯨を始末させるつもりでしたが、蝉が時間に遅れてきたため失敗に終わりました。
梶の不審な様子から状況を察した鯨は、梶を返り討ちにします。
鯨は梶が連絡を取っていた岩西の元へ向かい、依頼を受けた殺し屋が蝉であることを知ります。
蝉はフロイラインの社員が寺原の息子を殺した押し屋を探している情報を聞き出していたため梶に指定された時間に遅れてしまっていたのです。
ターゲットを失ってしまった蝉は、フロイラインが探している押し屋をフロイラインの社員より先に探し出そうとしていました。
そこで、押し屋の居場所を知っているという鈴木を追跡していたところ、比与子に拉致・監禁されたのを目撃したので救出したのです。
鯨もまた押し屋を探していました。
鯨はこれまで殺してきた人間の幻覚や幻聴に長年苦しんでいたため引退を考えていたのですが、過去に1度だけ押し屋に先を越されて悔しい思いをしていたので、押し屋を殺してから引退しようと考えていました。
鈴木が蝉に救出され外に出ると、鯨が待ち伏せをしていました。2人は戦い、最終的に鯨が蝉を殺します。
その隙に槿が鈴木を車に乗せ、この場から鈴木を救出したのです。
槿は自分たちが「劇団」の人間であることを鈴木に告白しました。「劇団」とは、フロイラインと敵対しているグループで寺原を殺そうとしていました。
槿の家族だと思っていたすみれや息子も本当の家族ではなく、比与子がさらった若いカップルも劇団の人間でスズメバチと呼ばれていました。
スズメバチは寺原を毒殺し、比与子は押し屋によって電車に轢かれ死亡したことを聞かされました。
一方、残されてしまった鯨は、姿を消してしまった鈴木を追いかける途中で亡霊が見え、その亡霊に導かれるようにライトバン轢かれて死亡しました。
こうした妻の死に関わった者たちが全て死に、自分も裏の世界から抜け出した鈴木は広島で塾講師として再出発することにしました。
ホームで電車を待っていると、反対側のホームに劇団で押し屋の槿の息子役をしていた子どもを見かけたので手を振ろうとしましたが、電車がやってきて彼らの姿は見えなくなってしまいました。