【小説】Nのために【あらすじ・ネタバレ】
野口貴弘の自宅マンションで、妻である奈央子は腹部にナイフが刺さり死亡、さらに貴弘も燭台で頭部を殴打され死亡していました。
現場に居合わせたのは、杉下希美、成瀬慎司、西崎真人、安藤望の4人でした。
通報で駆けつけた警察官により事情聴取が行われ、西崎真人は奈央子と不倫関係にあったことを告白しました。
奈央子が貴弘に監禁され暴力を受けていたことから、奈央子を救い出すために訪れ、一緒に逃げようとしたところ貴弘に見つかり殴られ、それを止めるために奈央子が包丁を取り出したと話しました。
そして、その行動に腹を立てた貴弘が奈央子の腹部を刺し、呆然としていた貴弘を自分が燭台で撲殺したと自供しました。
西崎真人は殺人容疑で逮捕され、懲役10年の実刑判決を受けることになりました。
<事件の真相>
「野バラ荘」は周辺の開発にともない、立ち退きを迫られていました。
かつての住人である杉下希美、西崎真人、安藤望らが集まり、高齢の大家のために「野バラ荘」を守ろうと一肌脱ぐことになりました。
そこで、周辺開発に関わっている資産家の野口貴弘・奈央子夫妻に近づくことを思いつき、実行に移し成功しました。
貴弘・奈央子夫妻と交流するようになり、貴弘の趣味が将棋であることが分かった杉下希美は、自身が将棋が強いということから貴弘のの試合相手になり取り入ることができました。
しかしその行動から、奈央子は貴弘と杉下希美が不倫関係にあるのではないかと疑い始めます。
夫である貴弘と不倫関係にある杉下希美と西崎真人が恋人関係にあると思っていた奈央子は、貴弘から杉下希美を引き離すために今度は自分自身が西崎真人に近づきました。
奈央子と西崎真人は実際に不倫関係になり、貴弘の社内でその噂はすぐに広まりました。
貴弘は西崎真人に2度と会わせないように奈央子を自宅に監禁し、さらに暴力を振るっていました。
杉下希美と安藤望から奈央子が監禁されていることを知った西崎真人は、奈央子を救い出そうと考えました。
西崎真人は杉下希美に計画を手伝ってもらうことにしました。
杉下希美は貴弘から、奈央子が流産して病状が悪くなっており、流産のショックでふらふらと1人で外出して危険だったためドアの外側からチェーンをかけていると聞いていたので、奈央子を元気付けるためにフレンチレストランのシェフに出張して貴弘・奈央子夫妻の自宅で食事することをことを提案しました。
フレンチレストランには杉下希美の同郷の成瀬慎司がアルバイトとして働いているので便宜を図ってもらいました。
貴弘は提案を快諾し、貴弘・奈央子夫妻、杉下希美、安藤望の4人で食事を行うことになりました。
食事の日、西崎真人が花屋のふりをして自宅へ現れ、奈央子を連れ出すという計画でした。安藤望には迷惑をかけないために計画内容は伝えていませんでした。
当日、予定時刻より早く現れた安藤望は、最上階のカフェで時間を潰そうとしていました。
しかし、その途中にある48階の貴弘・奈央子夫妻の自宅へ向かう西崎真人とエレベーターの中で会ってしまいます。
花屋の格好をしている西崎真人の姿を見て不審に思った安藤望は、最上階で降りずに再度48階へ向かいます。
杉下希美と西崎真人が何かを企んでいると考えた安藤望は、インターフォンを押して問いただそうとしましたがやめました。
その際、外側にあるチェーンを見た安藤望は、そのチェーンをかけてしまいました。
計画通り花屋のふりをして自宅へ入った西崎真人は奈央子を連れ出そうとします。
しかし、貴弘と杉下希美の不倫を疑っている奈央子は、自宅に2人を置いていきたくないので杉下希美を外へ連れ出してほしいと言い、家を出ることを拒否しました。
そのやり取りの中、貴弘が杉下希美と将棋を指していた貴弘が現れ、西崎真人に殴りかかりました。
西崎真人は逃げ出そうとしますが、外からチェーンがかけられているため出られませんでした。
杉下希美は助けようとして花瓶を振り上げたところ、貴弘を奪われたくないという思いの奈央子は貴弘を燭台で撲殺してしまいます。
その後も西崎真人は奈央子を連れて逃げようとしますが、奈央子がそれを拒否したため、あきらめて杉下希美とともに部屋を出ようとします。
その時、奈央子は包丁で自分の腹部を刺し、自殺しました。
それを見た西崎真人は、奈央子を殺人犯にしたくないという思いから、自分が貴弘を殺したことにすると言い出し、杉下希美にも口裏を合わせてもらうことにしました。
貴弘と安藤望は将棋で5番勝負をしていました。
貴弘は安藤望の上司で、安藤望が将棋で1度も勝てなかったら海外赴任するという条件つきの勝負でした。
そのことを知らずに杉下希美は、貴弘のアドバイザーとして指南していました。
事件の直前、貴弘から安藤望の海外赴任の話を聞かされた杉下希美は、自分のせいで安藤望が海外へ転勤させられてしまうと悩みました。
そこで、西崎真人が考えた計画を全てばらしました。
奈央子を連れ出そうとする西崎真人が貴弘に殴られ、貴弘を傷害罪で訴えれば安藤望の海外赴任の話はなくなるのではないかと考えたからです。
ところが、外側からチェーンがかけられ逃げることもできず、さらに妻である奈央子の予想外の行動により大事件へと発展してしまいました。