【小説】火花【あらすじ・ネタバレ】
お笑いコンビ「スパークス」の徳永は、熱海のお祭りの営業に行った際に先輩芸人である神谷と出会いました。
神谷は「あほんだら」というお笑いコンビを組んでおり、今までにはなかった独創的な漫才が特徴で、徳永はそんな神谷に憧れていました。
仕事が終わった後、神谷は徳永を飲みに誘いました。
その時の会話の流れで徳永は神谷に、弟子にしてほしいと申し込み、神谷はそれを了承しました。
その際に、神谷は徳永に「俺の伝記を書いてほしい」と頼み、その日から徳永は神谷との日々をノートに書き綴るようになりました。
大阪を拠点に芸人として活動していた神谷は、芸人として成功するために上京しました。
徳永はバイトを続けながら、相方とネタ合わせをしたり、若手芸人が出演する舞台に立つという日々を送っていました。
少しずつではありますが、徳永は漫才番組や深夜のバラエティ番組やネタを披露する番組などにも呼ばれるようになっていました。
人気者になるにつれて、以前とは比べ物にならないほど収入も増えていきました。
一方、自分の考えを曲げ相手に調子を合わせることのできない神谷は、テレビ番組はおろか若手芸人が出演する舞台に立つこともありませんでした。
ある日徳永は、神谷の相方である大林から、神谷には多額の借金があることを知らされました。
神谷は借金が膨らみ続けているにも関わらず無理をして金を用意し、後輩に奢るという行為を繰り返していました。
大林から、このままでは漫才師を続けることはできないかもしれないとまで言われた徳永は、これ以上借金を増やさせないためにも神谷と付き合うのをやめ、疎遠になっていきました。
ある時、大林から神谷と連絡が取れなくなったと連絡が入り、徳永は急いで神谷の住んでいたアパートに向かいましたが既に引き払った後で、事実上引退することになりました。
さらに徳永の相方も、同棲していた彼女の妊娠を機に結婚して芸人を辞めると言い出しました。
徳永は相方以外にお笑いコンビ組むつもりはなかったので、徳永もまた芸人を引退することになりました。
芸人を辞めた徳永は不動産屋で働くことになりました。
神谷が失踪してから1年が経ったある日、突然神谷から電話があり再会することになりました。
指定された場所に徳永が向かうと、そこには借金を全て返済することができず自己破産した神谷がいました。
失踪したことで無断欠勤を続けていたので事務所もクビになっていました。
神谷のお笑いに対する情熱は変わっておらず、それどころか芸人にはキャラクターが必要だという考えに至った神谷は豊胸手術を受けFカップになっていました。
おっさんが巨乳だったら面白いだろと笑う神谷を見て、徳永は引いてしまいました。
徳永に「性同一性障害で苦しんでいる人もいるのに、その姿が世間に受け入れられるとは思えない」と指摘された神谷は、自分の浅はかな行動に後悔しました。
正月休みに、徳永は神谷の誕生日祝いとして熱海旅行を計画し、出かけました。
そこで素人参加型の熱海お笑い大会があるというポスターを見つけ、神谷はネタ作りを始めました。
その様子を見た徳永は「生きている限り、バッドエンドはない。僕たちはまだ途中だ。これから続きをやるのだ。」と思い、今までのように神谷との出来事をノートに書き続けました。
そこへ神谷が「おい!!とんでもない漫才思いついたぞ」と、美しい自慢の乳房を揺らしながら徳永に言いました。