【昔話】こわしみず【あらすじ・ネタバレ】
むかしむかしあるとろこに、庄助と庄吉という兄弟が住んでいました。
2人はまだ幼かったのですが、病気で働けない父に代わって毎日炭を焼き、これを町に売りに行って暮らしを立てていました。
ある日のこと、2人は山にある炭焼き小屋に向かう途中、山道で弱って動けなくなっているきつねを見つけました。
これを見た兄の庄助は、自分の上着をきつねにかぶせてあげて、さらに、お腹を空かせているだろうと思い、持っていたおにぎりも分けてあげました。
それからしばらく経ち、雪が降り始めるとともに父の具合は悪くなり、近頃は食欲もなくなって、体は弱まる一方でした。
見かねた庄助は父に暖かおかゆと薬を買うために、深い雪の中、町まで炭を売りに行くことにしました。
しかし、炭はどこの家でも足りていて、薬と米を買うほどの金にはなりませんでした。
手ぶらで家に帰るわけにも行かず、せめて薬になるユキノシタの芽を摘もうと、庄助は雪山の中にユキノシタの芽を探しました。
すると、どこからともなく鈴の音が聞こえ、甘い香りがただよってきました。
庄助が鈴の音と甘い香りに誘われて歩き出すと、その先には美しい娘が立っていました。
娘は「庄助さん、足元を掘ってみてください。そこから湧いてくる水は薬水ですよ」と言いました。
庄助が足元の雪を掻き分けると、娘の言葉通り甘い香りのする水が湧いていました。
娘は、その湧き水を父に飲ませるように言うと、庄助に上着を返して去って行きました。
この娘は庄助が助けたきつねだったのでした。
急いで家に帰った庄助が湧き水を父に飲ませると、病気はみるみる良くなり、以前のように働けるまでに回復しました。
きつねが教えてくれた教えた湧き水は、こわしみずと呼ばれるようになりました。