【昔話】くだキツネ【あらすじ・ネタバレ】
むかしむかしあるところに、飛脚の松右衛門という男が住んでいました。
ある日、桧尻の辺りで休んでいると、キセル入れをなくしてしまった松右衛門は、探すのも面倒でたまたま足元に転がっていた竹の管を拾って帰りました。
その夜、松右衛門の家に桧尻のキツネがやってきて、「火つけ管を返してほしい」と訴えてきました。
この火つけ管とは、足元に転がっていたのを松右衛門が拾ったもので、口に当てて吹くと熱くない火が出るという便利なものでした。
どうしても返したくない松右衛門は、毎晩やってくるキツネを無視し続けました。
そのうちにキツネも諦めたのか、とうとうやってこなくなりました。
ある日、松右衛門は京へ飛脚にたちました。
京までの道のりは遠く、琵琶湖が見える近江の石部の宿で1泊することになりました。
その夜は大雨だったので、こんなところまで桧尻のキツネはやってこないだろうと思っていましたが、それでも桧尻のキツネはやってきました。
松右衛門は、そんなに大切な物だったのかと気がつき、心からキツネに詫び、キツネが遠くの山へ去っていくのをいつまでも見送りました。