【昔話】鬼の刀かじ【あらすじ・ネタバレ】
むかしむかしあるところに、刀鍛冶の男がいました。
男には美しい娘がいました。
色白で気立ての良い娘だったので、何度か結婚を申し込まれていましたが、なかなか決まりませんでした。
そうというのも、男が「婿に迎える者は、一晩のうちに刀千本を鍛えられる者でないと認めない」と言い張っていたからです。
最初のうちは、何人かの若者が娘と結婚したいと思うあまり鍛冶場にこもってみましたが、到底できるわけもなくみな諦めていきました。
そのうちに、夜明けまでに刀千本鍛え上げるなど、人の技でできることではない、と村の人々は娘に同情していました。
そんなある日、立派な若者が訪ねてきて、「私は遠いところから来たのですが、娘に一目ぼれしたので婿にしてほしい」と申し込みました。
明日の早朝に刀千本鍛えるのが条件だと話すと、若者は鍛冶場にこもっている間、何があっても見ないでほしいと条件を出しました。
こうして若者は鍛冶場にこもって刀を打ち始めたのですが、若者が打つ音がおどろくほど大きくて、娘と母は恐れていました。
翌朝、鍛冶場を覗いて見ると、刀千本を鍛え上げた若者が横になっていました。
男は一晩で刀千本を打ち上げる婿が見つかったと大喜びで、若者を婿に迎えました。
男は刀鍛冶を若者にまかせ、のんびりと暮らし始めました。
若者の打つ刀の切れ味の良さはたちまち評判になっていきましたが、その代わりに娘が日に日に痩せ細っていきました。
男が娘に話を聞いてみると、婿はどうもただものではないと言いました。
娘が鍛冶場を覗いて見ると、なんと鬼が刀を打っていました。
男が声をかけると、鬼は刀を抱えて逃げ出してしまいました。