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【昔話】フカ地蔵【あらすじ・ネタバレ】

むかしむかしある島に、1人の海女が住んでいました。

この海女は、島の中でもよく働き、誰よりも多くアワビやサザエを取ると有名でした。
その上、漁師たちよりも男勝りでとても評判でした。
実はこの海女は、時化で漁師の夫を亡くしており、女手一つで子どもを育てていたのでした。

海女は、毎朝早起きをして、人知れず丘の上のお地蔵さまに「時化がきませんように、海が穏やかでありますように」とお参りしてから漁に出ることを日課にしていました。

ある年の夏、この年はアワビやサザエがまったく取れず、海女も困り果てていました。
そんな時、沖の磯へ行けば少しは取れるという話を漁師から聞いた海女は、夕暮れにも関わらず沖へ向かって舟を漕ぎ出しました。

沖の磯に潜ってみると、たくさんのアワビやサザエがありました。
こうして海女は時が経つのも忘れて、アワビやサザエを取っていたのですが、いつの間にか風が強くなり、海は荒れだしました。
海女は何とか岩場にしがみついたのですが、潮が満ち始めたので、その岩も海に沈もうとしていました。

その時、どこからともなく1匹のフカが現れ、海女のまわりを泳ぎはじめました。
海女は、ここで死んでしまうよりは…思い、フカの背に飛び乗りました。
すると、フカはものすごい速さで泳ぎだし、海女は振り落とされないように、思わずフカの背に貝をそぎ取るノミを突き刺してしまいました。

こうして何とか浜に泳ぎ着き一命を取り留めた海女は、体がよくなってから、いつものように丘の上のお地蔵さまのところへ向かいました。
すると、お地蔵さまが倒れており、その背中にはノミを刺された跡がありました。
自分を助けてくれたあのフカは、お地蔵さまの化身だったのだと悟った海女は、以前にも増してお地蔵さまにお参りするようになり、村人たちもこのお地蔵さまをフカ地蔵と呼んで大切にしました。


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