【昔話】みちびき地蔵【あらすじ・ネタバレ】
むかしむかしあるところに、端午の節句を翌日に控えた浜吉という男の子とその母がいました。
母子は隣の町まで田植えの手伝いに出かけていました。
母子が家に帰る途中には「みちびき地蔵」と呼ばれる地蔵さんがあり、この地蔵さんは翌日亡くなる人の霊が地蔵さんに参りにきて、霊をあの世へ導いてくれると言われていました。
母子はは地蔵さんにお参りをしようと手を合わせると、他にもたくさんの人がいるような不思議な気持ちになりました。
ここには母と浜吉だけしかいないはずなのに、ふと見上げてみるとそこには村のおばあさんの姿や、若い母親と赤ん坊、馬や牛までいました。
母は「みちびき地蔵」の言い伝えを思い出し、そこで見えた人たちはみんな亡くなるのか…と思いましたが、あまりの人の多さに急に恐ろしくなり浜吉の手を引いて急いで帰りました。
家に帰った母は父にさっき見たことを話しましたが、まともに聞いてはくれませんでした。
そして翌日、端午の節句を迎えました。
その日は普段よりも潮が引いていたので村人たちがたくさん浜辺へ出て海草や貝拾いをしていました。
それを見た母と浜吉も浜辺へ向かい、海草拾いをしていると、突然大きな津波がやってきました。
母は浜吉をおぶってなんとか裏の山まで登りきると、遠くにあった津波がどんどん近づき、浜と村を飲み込んでしまいました。
母子は助かりましたが、逃げ遅れた人たちや牛や馬も津波に飲み込まれてしまいました。
昨日みちびき地蔵の前で見たのは、この津波で亡くなる人が地蔵さんを参っていたのだと母は悟りました。