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【昔話】すもう小天狗【あらすじ・ネタバレ】

むかしむかし富士山の麓の西側に小さな村がありました。
この村の人々は、僅かな畑と、富士川で獲れる魚を食べて暮らしていました。

村の上流には天狗岩というところがあり、そこには小天狗が住みついていました。
この小天狗は相撲が大好きで、たびたび村人たちと相撲を取ろうと姿を現しましたが、村人たちは怖がって誰も相撲を取ろうとはしませんでした。

その年の夏はひどい干ばつで、富士川も干上がってしまいました。
そんなある日の夕方、権兵衛という男が僅かに水が残った富士川で投網をしていると蓑笠を被って釣竿を持った漁師に話しかけられました。

実はそれは漁師に変装した小天狗でした。
富士山から1人でやってきた小天狗は、天狗岩に住んでいたのですが、村人たちが誰も相手にしてくれないので、相撲を取ってもらうために漁師に変装してやってきたと言いました。

小天狗が可哀そうになった権兵衛は相撲の相手をしてあげることにしました。
小天狗はなかなか強く、権兵衛は負けてしまいましたが、相撲を取った後、小天狗は魚を獲りに行こうと言いだしました。

背負った権兵衛に目隠しをした小天狗は、矢のように空を走り、川に権兵衛さんを連れて行きました。
すると小天狗は呪文を唱えて、あっという間にカゴいっぱいのアユを獲りました。

帰り道、権兵衛が薄目を開けてみると、なんとその川はお伊勢さまの傍を流れる鳥羽の川でした。
権兵衛はたくさんのアユを持って、あっという間に村に戻ってきました。

こうして村人たちは小天狗権兵衛が持ち帰ったアユに救われました。
それからは、村人たちは小天狗に出会っても怖がったり逃げたりすることなく、相撲の相手もするようになりました。


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