【昔話】やろか水【あらすじ・ネタバレ】
むかしむかしあるところに、よく洪水に見舞われる小さな村があり、雨季になると村人たちは毎日ハラハラしながら生活していました。
この年も、何日も降り続く雨に木曽川の水嵩が増していき、男たちは女と子どもたちを避難させて、土砂降りの中堤防の補強をしました。
そのうちに雨が止み、月も見えてきたので、男たちは休息をとりにそれぞれの家に戻りましたが、十四郎という男が1人で水門の守りに残りました。
十四郎は川の近くで花びらを散らして遊ぶ若い娘を見つけました。
危ないので自分の家に連れ帰ってなぜ1人で外にいるのか事情を聞くと、娘は夫が死んだ時のことを話し出しました。
娘の夫は3年前の大雨の年、十四郎と同じく水門の守りをしていました。
その時「やろか、やろか」と川上から唸るような声が聞こえてきたので、気が強い夫はそれに応えてしまいました。
すると、川から高波が押し寄せ、娘の夫は濁流にのまれて帰らぬ人となってしまいました。
娘がなげやりに、みんな流されて死ねば良い、などと嘆き自殺をほのめかすので、十四郎は必死に止めました。
すると今度は、娘は十四郎に女房のことは忘れて私と夫婦になってほしいと迫ってきました。
そして、それが無理ならば今度こそ本当に自殺すると言い出しました。
十四郎はとうとうこの娘の強引さに負け、女房を裏切って娘と夫婦になることにしました。
川の音が強く聞こえてくると、娘が止めるのを聞かずに十四郎は水門の様子を見に飛び出しました。
水が引いたら娘と高台へ逃げて、炭焼きでもして暮らそうなどと思いながら水門に着くと、川からあの「やろか、やろか」という声が聞こえてきました。
十四郎は娘の夫と同じようにそれに応えてしまいました。
そして村は濁流にのまれ、2人の行方も知れることはありませんでした。