【昔話】甚兵衛山のキツネ【あらすじ・ネタバレ】
むかしむかしあるところに、甚兵衛というおじいさんが住んでいました。
ある春の日、甚兵衛が山で木を切っていると、猟師に追われたキツネが甚兵衛のところに逃げてきました。
そこへ猟師がやって来てキツネを見なかったか、と聞かれましたが甚兵衛は嘘を教えて、キツネを山に帰してあげました。
その年の夏はひどい暑さで、甚兵衛は暑さに耐え切れず寝込んでしまい、そのうちに意識を失ってしまいました。
しばらく経って甚兵衛が目を覚ますと、美しい娘が枕元に座って看病してくれていました。
甚兵衛がお礼を言うと、娘は「私はあなたに命を助けられましたので」と言いました。
しかし、甚兵衛はどうしてもその娘のことを思い出すことができませんでした。
娘は毎日、朝早くから食事を作り、部屋に美しい花を飾り、薪を売りに行くなど熱心に甚兵衛の世話をしました。
しかし、秋が終わりに近づいた雨の日、甚兵衛の容態が急に悪くなりました。
甚兵衛は娘に向かって申し訳ないと何度も謝りながら死んでしまいました。
甚兵衛の亡骸は村人たちの手で山の中腹に葬られました。
その頃から娘の姿は見えなくなり、村人たちの中にも娘の行方を知る者はいませんでした。
村人たちは、あの優しい甚兵衛のことだから、助けたキツネが恩返しに出てきたのだろうと噂していました。