【昔話】逃げる怪火【あらすじ・ネタバレ】
むかしむかしあるところに、小さな団子屋を営んでいる夫婦が住んでいました。
妻に頭が上がらない婿養子の源は近所でも評判で、村中から陰口をたたかれていました。
ある日源の幼馴染の芳が、今夜、隣村で酒を飲む寄り合いがあるから一緒に来ないかと誘いにきました。
いつも妻の機嫌を取って仕事を休むことすらできない源は誘いを断りましたが、本心では酒が飲みたくて仕方ありませんでした。
その夜、1人で隣村へ行った芳は、寄り合いで酒を飲み千鳥足で夜道を歩いていましたが、自宅まであと少しのところまで来て一服しようとすると、道端に蛍の光の何倍もある火が落ちていました。
炭火だと思った芳が煙管を持って近づくと、火は突然飛び上がり芳から離れていきました。
不思議に思った芳は、もう1度火に近づこうとしましたが、火はさらに奥へ遠退き道を転がっていきました。
これは怪火に違いないと思った芳は、怪火を追いかけ始めました。
こうして怪火を追いながら、いつしか源の団子屋の庭先まで来ていました。
怪火が団子屋の障子の破れ目に入り込むのを見た芳が中を覗くと、なんと怪火は寝ている源の口の中へ飛び込んでいきました。
隣で寝ていた妻がうなされている源を起こすと、「夢の中で自分が休んでいると、芳が煙管を突き付けてきた!いくら逃げても追いかけてくるのでとても怖かった…」と言いました。
あの怪火の正体は源の魂であり、夜になると源の魂は自由になりたくて外に遊びに出ていたのでした。
外で話を聞いてぞっとした芳は、源に声もかけず逃げ帰りました。