【昔話】塩ふきうす【あらすじ・ネタバレ】
むかしむかしあるところに、兄と弟が住んでいました。
兄は強欲な怠け者で、家や田畑の手入れを弟に任せきりにしていました。
ある時、弟は結婚して嫁をもらったのですが、兄は弟に田畑を分け与えることも貸すこともしてくれませんでした。
そのことが原因で弟夫婦は家を出て、荒れ地に新しい田畑を作り始めました。
しかしそれは簡単なことではなかったので、年越しの晩には弟の家には米が1粒も残っていませんでした。
弟は兄に米を借りようとしましたが、兄は一切米を貸してくれませんでした。
弟が家に帰る途中、強い風が吹き、気がつくと奇妙なおじいさんが目の前に立っていました。
おじいさんは麦まんじゅうを差し出して「お堂の裏の穴に行って、この麦まんじゅうは石臼となら取り換えても良いと言いなさい。そうすれば良い正月がきますよ」と言いました。
弟が麦まんじゅうを持ってお堂の裏の穴へ行くと、どこからか「これと換えてくれ」と黄金を山のように積み上げていました。
「この麦まんじゅうは石臼となら取り換えても良いですよ」と弟が叫ぶと、ワッと小人たちが現れ、あっという間に弟の手には石臼だけが残っていました。
それは宝の石臼で、右に回せば望みの物が出て、左に回せば止まるというものでした。
弟は早速家に持ち帰り、最初に石臼から米を出し、それから鮭、馬、屋敷を出して、一晩のうちに長者になりました。
翌日、弟は村人たちを集めてご馳走を用意して正月を祝いました。
それを知った兄は、弟が石臼で土産のお菓子を出しているところを盗み見ました。
石臼のことに気づいた兄は、その夜の間にそれを盗みだし、舟に乗って昔から住んでいた土地から逃げ出しました。
舟が沖に出た頃、兄は一緒に盗んだお菓子ばかり食べていてそろそろ塩辛い物が食べたくなったので、石臼を回して塩を出しました。
石臼はもの凄い勢いで塩を出し始め、止め方を知らなかった兄は舟と一緒に海の底深く沈んでしまいました。
石臼は今でも海の底で塩を出し続けているそうです。