【昔話】泉長者【あらすじ・ネタバレ】
むかしむかしあるところに、太郎と花という貧しいが信心深い夫婦が住んでいました。
ある天気の良い日に、太郎は畑仕事の合間に疲れて眠ってしまい、不思議な夢を見ました。
夢の中でどこからか漂ってくる良い匂いに誘われた太郎が進んでいくと、小さな穴があってその奥に泉が湧いていました。
太郎が泉の水を飲んでみると、それはとてもおいしいお酒でした。
しばらくして目を覚ますと、太郎の顔は赤くなって息は酒臭くなっていました。
そこで太郎が夢で見た通りに歩いていくと、そこには穴があり、夢で見たのと同じように酒の泉が湧いていました。
これは如来さまからのお告げだと喜び、花と2人で小さな酒屋を開きました。
すると、その酒の美味しさはすぐに評判になり、あっという間村一番の酒屋になりました。
太郎と花は何不自由ない暮らしを送るようになりました。
次に夫婦は、如来さまに子宝に恵まれるよう祈ると、かわいらしい女の子が生まれました。
夫婦は如来さまのお堂がユリの名所だったので、女の子に「ゆり」と名付け大切に育てました。
ゆりは名前のとおり美しく豊かな娘に育っていきました。
やがて太郎は自分たちに「位」が欠けていることに気が付きました。
そこで太郎は、都の大臣に使者を送り、夫婦の1番の宝であるゆりと引き換えに、長者の号を得ることにしました。
こうして夫婦はゆりを大臣に差し出し、長者になって、欲しいものを全て手に入れました。
しかし、長い年月が経つうちに夫婦はゆりがいない寂しさに耐えられなくなりました。
こうしてゆりがいない寂しさから夫婦は重い病にかかり、相次いでこの世を去ってしまいました。
都から駆けつけたゆりは両親の死を悲しみ、2人が信心した如来さまのために立派なお堂を建立しました。
夫婦が見つけた泉は二人が亡くなってから急に涸れてしまいました。
しかし、この夫婦のことは今でも泉長者として語り継がれています。