【昔話】龍の淵【あらすじ・ネタバレ】
むかしむかしあるところに、漆取りの兄弟が住んでいました。
ある時、兄が漆の木を探して山の中を歩いていると、気味の悪い淵に出ました。
兄はうっかり鉈を淵に落としてしまったので、潜って探していると、ふと淵の底に良質な漆が溜まっているのを見つけました。
それを町へ持っていくと驚くほど高値で売れたので、その日から兄は人が変わったように怠け者になってしまいました。
弟にはそのことを秘密にしていましたが、ある日、兄の行動を怪しんだ弟は兄の後をつけて淵の漆のことを知りました。
そして弟も良質な漆を町へ売りに行き、兄と同じように怠け者になってしまいました。
弟に知られたことがおもしろくなかった兄は、淵の底に木彫りの龍を沈めて弟に漆をとらせないようにしました。
翌日淵に潜った弟は、木彫りの龍を本物と勘違いして逃げ帰りました。
それを見た兄は、今度こそ1人占めしようと淵に潜ると、木彫りの龍が動き出して襲いかかってきました。
慌てて逃げ出ましたが、作り物の龍が動くはずがないと、もう1度潜ってみましたが、やっぱり龍が襲いかかってきました。
何とか逃げ切ることができましたが、その後、龍は深い淵に戻ったまま2度と姿を現すことはありませんでした。