【昔話】丈六地蔵【あらすじ・ネタバレ】
むかしむかしあるところに、男が住んでいました。
男の住んでいるところは川がよく氾濫していました。
男は、妻と幼い子どもを川に飲まれて亡くし、それ以来荒れた生活を送っていました。
ある日男は、妻と子どもの仇を討つつもりで川に堤防を作ることを決心しました。
しかし岩はとてもかたく、川幅も広いため、思うように工事は進みませんでした。
そんな男を見て村人たちも手伝い始めたのですが、いっこうに進まない堤防作りにだんだんと手伝う者も減っていき、男はまた1人になって堤防を作ることになりました。
そして堤防作りをはじめて数年が過ぎ、ようやく堤防が完成しようという時、川が氾濫し始めました。
男が堤防へ向かうと、あと一歩で完成の堤防が決壊しそうになっていたので、男は押し流されそうになりながらも必死で堤防を押え続けました。
翌朝村人たちが堤防へ行ってみると、そこには男の姿はなく、そこには大きな石がひとつありました。
村人たちは男が石となって堤防をふさぎ、妻と子どもの仇を討ったのだと話し、その石で地蔵を作ることにしました。
地蔵は完成し、その地蔵をお寺まで運ぼうとしたのですが、あまりに大きな地蔵のため運ぶことができませんでした。
すると、不思議なことに地蔵が、「私が自ら歩いていきましょう。しかし、歩いている姿を人に見られるわけにはいきません」としゃべりだしました。
地蔵の言葉を聞いた村人たちは、家に戻りお祈りをしました。
その間に地蔵は寺へ向かってゆっくりと歩き出しました。
その途中にある橋まで来た時、幼い子どもをかかえて身投げしようしている女に会いました。
どうしたのかと訊ねると、女は「子どもの足が悪く、立つことが出来ないのでそれを嘆いて死のうと思っていました」と言いました。
すると地蔵は、それならばならば私の足をその子どもにあげようと言い、自ら足を折ってその場に座りこみました。
そして女が子どもを立たせてみると、子どもは立ち上がることができました。
女は地蔵に深くお礼を言って帰ってきました。
そしてその地蔵は「丈六地蔵」と呼ばれ、その後お寺におさめられました。