【昔話】鏡騒動【あらすじ・ネタバレ】
むかしむかしある山奥の村に、男が住んでいました。
その男の長年の念願かなって、城下町の見物をすることになりました。
城下町はとても賑わっていて、何もかもが初めてで驚くばかりでした。
男は村で留守番している女房のために、くしとかんざしを買ったあと、道具屋へ立ち寄りました。
たくさんの品々の中に鏡が置いてあり、覗き込んで見ると、そこに映っているのが自分ではなく他界した父親と勘違いしました。
男は鏡というものを見るのが初めてで、自分の顔が父親に似ていることなど知らなかったのでした。
男は鏡を買って、大満足で村へと帰っていきました。
家に帰ると女房は留守でした。
女房が帰るのを待っている間、「父親は自分の父親で、女房の父親ではない。自分の父親がいないとなると女房が寂しがるかもしれない」と思った男は、鏡をたんすの中にしまい、帰って来た女房にくしとかんざしを渡しました。
それから数日後、2人は畑仕事をしていましたが、突然男は仕事を抜け出し家に帰ってしまいました。
男はたんすの中の父親に話しかけていたのですが、その様子を女房がのぞいてしまい胸騒ぎがしました。
女房は男がいない隙になんすの中をのぞいてみると、中にあった鏡には、自分と同じくしとかんざしを挿している女が映っていました。
女房も、鏡に映っているのが自分とはわからず、男の浮気相手だと勘違いして怒りに震えました。
女房は、「たんすの中にいる浮気相手を選ぶなら家を出ます」と言って大喧嘩になりました。
男は誤解だと説明したのですが、女房は全く聞く耳を持たず、今から尼さんを呼んで確かめてもらうとまくしたてました。
夫婦に連れられてやってきた尼さんは、たんすの中をのぞき込みました。
すると、やはり鏡に映っているのが自分とは分からず、「確かに中に女がいましたが、反省して頭を丸めているので、もう男とは縁が無いですよ」と言い、夫婦喧嘩をおさめました。
鏡を知らない村で起きた騒動でした。