【昔話】赤い椀【あらすじ・ネタバレ】
むかしむかしあるところに、おせんという女の子がいました。
おせんは歌が大好きで、おせんの歌声が聞こえると、村人たちは仕事の手を休めて聞き惚れました。
親がいないおせんは、よその家の子守をしながら貧しい生活を送っていました。
幼いおせんの願いは、赤いお椀に真っ白なご飯をよそってお腹いっぱい食べることだったのですが、貧乏なおせんには、叶うはずのない夢でした。
ある日、おせんは子守のお手伝いをしている家のおばあさんと一緒に、山菜摘みに出かけました。
その途中で、草むらに赤いお椀が置いてあるのを見つけました。
おせんは、お椀が欲しくてたまりませんでしたが、おばあさんから「山で得体の知れないものを拾ってはいけません」と注意され、拾うのを我慢しました。
山菜摘みの帰り、先ほどと同じ場所に赤いお椀が置いてありました。
おせんはどうしても諦めきれず、赤いお椀を拾い上げると、怪しい風が吹き、風の中から不思議な声が聞こえてきました。
おせんは声に導かれるように、谷に向かって走り出しました。
谷に到着したおせんがいつもはない丸木橋を渡り始めると、突然橋は揺れ、大蛇に姿を変えました。
大蛇は、優しくおせんを咥えて、静かに谷の淵の底へと沈んでいきました。
おばあさんが淵に向かっておせんの名を呼びましたが、2度と浮かび上がってくることはありませんでした。
今では、おせんの落ちたこの淵を「おせん落としの谷」と呼んでいるそうです。