【昔話】ろくろっ首【あらすじ・ネタバレ】
むかしむかしあることころに、旅をしている男がいました。
男はいつも同じように宿屋に泊まろうとしたのですが、その夜は泊り客がたくさんいたので美しい女と同じ部屋に泊まることになりました。
ひとつの部屋の真ん中に屏風を立てて仕切り、一晩を過ごすことになったのですが、その日は熱帯夜で男はなかなか眠ることができませんでした。
男がようやく眠りにつく頃、仕切りの向こう側で女が起き上がる気配を感じました。
すると、仕切りの向こう側から生暖かい風が吹いてきたので男が不思議に思い見てみると、女の白い顔が仕切りの上まで伸びてきたのです。
男は、女が「ろくろっ首」であると思い、寝たふりをしながら部屋の中を動き回る女の首を見ていました。
するとろくろっ首は悪さをするわけでもなく、部屋中を動き回った後、半分あいた雨戸から外へ飛び出していきました。
男がろくろっ首の後を追いかけると、林の奥にある池の水を飲み始めました。
男も見つからないようにこっそり水を飲むと、ろくろっ首が男のほうを見て笑いかけてきたので、男は急いで宿屋へ戻りなにくわぬ顔をして眠りにつきました。
翌朝、男より早く目を覚ました女が「よく眠れましたか?」と話しかけてきたので、男は何も知らないふりをして、よく眠れたと答えました。
すると女が昨晩、「不思議なことが起きた」と言うので、男は仕方なく女に向かって、ろくろっ首ではないかと問い詰めました。
昨晩、女がこの部屋から飛び出して林の中にある池で水を飲んでいたことを話すと、女は笑いながら、「自分のことに気づいていないのですか?」と言いました。
男が不思議そうな顔をしていると、女は「この部屋は二階なので雨戸から外へ出ることはできませんよ」と言い、その言葉に男は自分もろくろっ首であることに気がつきました。
女はこれから一緒に旅を続けないかと誘いましたが、男は誘いを断り急いでその場を立ち去りました。