【昔話】のんべえ地蔵【あらすじ・ネタバレ】
むかしむかしあるところに、小さな酒屋と豆腐屋がありました。
ある冬の夜、とても変わった顔のお坊さんがお酒を買いにやってきました。
酒を入れてくれ、とお坊さんが差し出したのは、小さなザルでした。
酒屋の主人は「徳利じゃないと酒が入りません」と断ったのですが、お坊さんは気にすることなくザルに酒を入れ始めました。
不思議なことに、ザルからは一滴も漏れることがありませんでした。
驚く主人を残して、お坊さんはその場から去っていきました。
ちょうどその頃、同じ顔をしたお坊さんが町の豆腐屋に豆腐を買いに来ていました。
ここでもこのお坊さんは、四角い豆腐を徳利に入れるという不思議な技を見せ、何事もないかのように歩いて去っていきました。
こうしてこの坊さんは毎日、酒と豆腐を買いにやってきました。
不思議に思った店の主人たちは、お坊さんの後をつけて行きました。
すると、薄暗い古寺の近くでお坊さんの姿はフッと消えてしまいました。
酒屋の主人と豆腐屋の主人は、明るくなってから古寺の中を捜索しました。
するとかすかに酒のにおいがする小さな祠があり、その中には坊さんと同じ顔をしたお地蔵さんが立っていました。
主人たちは「あのお坊さんはお地蔵さんだったのか」と驚きました。
それ以来、このお酒の好きなお地蔵さんを「のんべえ地蔵」と呼び、村人たちはお酒やお豆腐のお供え物をしたそうです。