【昔話】首切り地蔵【あらすじ・ネタバレ】
むかしむかしあるところに、冬でも汗をかく不思議なお地蔵さまがいました。
ある年、村一帯はひどい日照りに見舞われ、田畑もすっかり干上がってしまい、食べるものがなくて困っていました。
そんな時、信心深いおばあさんが「わたしの体を2ヵ所削って、井戸とため池に入れてくれ」という、汗かき地蔵さまの声を聞きました。
おばあさんは躊躇しましたが、お地蔵さまの足元から小さいカケラを削り取り、干からびた井戸とため池に入れました。
すると中から大量の水があふれ出て、枯れた田にも水を引くことができ、村は日照りから救われました。
翌年の春、ある殿さまが、汗をかくお地蔵さまの噂を聞ききました。
不思議な力を持つお地蔵さまを使って、勝手に水があふれ出る「手洗い鉢」を作ろうと思いついたのでした。
村人の抵抗むなしく、お地蔵さまは殿さまの家来たちに強奪され、首を切り落とし体をくりぬかれてしまいました。
大満足の殿さまは、この手洗い鉢を諸国の大名たちに見せびらかそうと、千石船に乗せて江戸へ出発しました。
しかし殿様の乗った船は、港を出発した直後に、大波にのまれて沈んでしまいました。
首だけ残ったお地蔵さまは「首切り地蔵」と呼ばれ、後に殿さまの子孫がお詫びのために設置した「ことわり地蔵」とともに、ひっそりと村の暮らしを見守っています。