【昔話】藤身ヶ滝悲恋【あらすじ・ネタバレ】
むかしむかしあるところに、藤という若い娘がいました。
藤は、ある若い男に恋をしていました。
しかし、内気な性格の藤は自分から声をかけることもできず、ただ思いを募らせるばかりでした。
そんなとき、滝の向こう側にある不動尊に100回通って願い事を唱えると叶えてくれるという話を聞き、さっそく藤は滝の向こう側へ出かけて恋愛成就を祈りました。
通い続けて100日目のこと、願い事を唱える藤の目の前に不動明王が姿を現しました。
不動明王は、「東山の入口へ行くと3つに又分かれした古い松の木の枝に向かって石を投げ、松の枝に乗っかれば願いは叶う」と言いました。
藤は不動明王の言った松の木の元へ行き、石を投げましたが、思うように枝の上に乗っかりません。
何度も何度も投げてみましたが、すぐに石は落ちてしまいます。
藤は石を投げ続け、疲れ果ててしまった頃にようやく、叶わぬ恋なんだということに気がつきました。
そして哀しみに暮れた藤は、そのまま滝に飛び込んでしまいました。
藤が恋をした男は病気を患っており、既に亡くなっていたので、どれだけ思いを込めて石を投げても、最初から叶わない恋だったのです。
藤を可哀想に思った村の人たちは、その滝を「藤身ヶ滝」と呼ぶようになりました。